「ばかやろー、片耳返せ!」

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「母親が死んだとき、『ばかやろー片耳返せ! 
返せ!』って、亡くなった母親の耳を
掴みながら、泣き叫びました」――。
こう話すのは、母親からの虐待で左耳の
聴覚を完全に失ってしまった美咲さん
(仮名・23歳)。
いわゆる「虐待サバイバー」だ。
取材の際、美咲さんは虐待を
受けた日々を思い出し、
溢れ出す涙をぬぐった。
しかし、いくら拭ってもその涙は止まることは
なかった。

動物の子供とはどうして6等身かご存知ですか?
頭が大きい方が可愛いからなんです。
勿論生まれた時点で既に脳の容量が大人に
近いと言うことも有りますが。
とにかく頼れるのは大人で有る両親だけで
見放されると死が待ってます。
幼児の時は別にして小学校低学年にもなると
自分の意思で通報することも出来るでしょうが
はたして自分から通報し施設に入ることを
選ぶでしょうか?
下記の記事を読むと複雑です。
少しながい記事ですが最後までお読み下さい



虐待の後遺症、「重度難聴」

都内の居酒屋でアルバイトを
している美咲さんは、
肩下まで伸びたロングヘアーが印象的な、
可愛らしい女の子だ。
言葉遣いがとても丁寧で、
礼儀正しい人柄が伝わってくる。

生まれは東京・六本木。母親は
専業主婦だったが、美咲さんが
5歳の時、父親の多額の借金を
きっかけに、離婚。
その後、父親とは現在まで音信不通と
なっている。
残された美咲さん親子は生活保護を
受けるようになった。
しかし、その金の大半は、母親の
酒代に消えていった。

美咲さんによると、母親の虐待は、
2~3歳くらいのときから始まっていたという。
いつもそれは何の前触れもなく起こった。
いきなり灰皿を美咲さんの頭に投げ付けたり、
食べ物をこぼしたりする。
気に食わないことがあると、母親は美咲さんの
髪の毛を掴んで、部屋中を引きずり回した。
顔面を殴るのは日常茶飯事だった。
布団たたきで、体中叩かれて、全身が網目模様に
なったこともある。

母親は美咲さんの体の傷を隠すため、プールや
体育の授業は「心臓の病気」と嘘をついて
休ませていた。

灰皿を投げられて大ケガした後頭部には、
今もパックリと開いた傷が残っていて、そこだけ
デコボコになっているのだという。
その時は病院に連れていかれたが、
原因を聞こうとする医師に、「
階段から転げ落ちた」と事もなげに嘘をついた
母の姿を、今も忘れることができない。

「頭はコブだらけでした。それがまるで
月面のクレーターみたいなんですよ。
どこを触っても、ジャガイモのようにでこぼこ。
小さい頃はよく『今日は、いち、に、さん、
し、ご、ろく、七個増えた』って数えて
いましたね」

激痛のあまり、枕も使えず、ごろりと布団に
横たわるようにして寝るのが日常だった。

左耳がダメージを受けたのは、殴打などによる
ものではなかった。
幼稚園に入ったばかりの頃だった。
コップの水をこぼした美咲さんを、母親は
鬼のような形相で風呂場まで連れていき、
シャワーヘッドから噴射する水を左耳に押し当て
たのだ。

「耳いたいよー! お母さん、耳いたいよー!」

そのせいで鼓膜が破れ、左耳の聴覚を完全に
失ったという。
難聴の中でも最も悪い「重度難聴」だ。

「なんで救急車を呼ぶの?」

けれども、美咲さんにとって一番辛かった
経験は、顔中を殴られることでも、
左耳の聴覚を失うことでもなかった。

真夏のクローゼットーー。
そこは灼熱の地獄だった。

母親は気が済むまで暴力を振うと、
いつも決まって最後は部屋のクローゼットに
美咲さんを閉じ込めた。
6歳の子どもの力では開けることはできなかった。

「とにかく中が熱くて、熱くて、飲み物もないし、
トイレも行けない。
お腹も空く。
そのうち気持ち悪くなって、吐いちゃうんですよ。
暑さで脱水症状に見舞われてゲーゲー。
おしっこも漏らしっぱなし。
クローゼットの中は、ひどい状態になって
ましたね」

永遠とも思える時間が過ぎたころ、汚物と小便に
まみれて、意識を失っている美咲さんを見た
母親は、慌てて救急車を呼んだ。

意識が少しずつ回復すると、美咲さんには、
ある疑問が浮かんだ。

「救急車を呼ぶってことは、助けたいから」
呼ぶんでしょ、なんで救急車を呼ぶの? 
って思ってました。
殺したいのか、生かしたいのか、どっちだよって」

しかし、そのときも周囲から虐待だと気づかれる」
ことはなかったという。
美咲さんは、当時を振り返って、第三者が虐待を
疑っていても、見て見ぬふりをするケースが
かなりあるのではないかと話す。
昔と比べて児童虐待の認知度は高まっては
いるものの、家族を「聖域」とみる考え方は
未だに根強い。

「子どもは、虐待されていても、言葉が見つから
ないんです。
子どものときって、悲しいとか、痛いとか、
語彙が乏しいから言葉で伝えらないというのも
あるんです。
だから、大人の人の気付きが重要なんです。

私は周囲の大人の人たちに助けて欲しかった。
体中あざだらけだったし、着替えは幼稚園の
先生に手伝っていてもらっていたから、
知っていたはず。
でも、何もしてくれなかった」

母親は、美咲さんを虐待した後、毎回、必ず我に
返ったかのように美咲さんを抱きしめ、そして
泣き出した。

「毎回泣きながら『ごめんね、こんな親でごめん』
と謝るんです。
子ども心にはそれを信じたい。
怖いけど、許しちゃう、どんなことされても
お母さんだから、信じたい。
どんなにヒドイことされても、頑張ろうって」

自分にとって、たった1人の母親――。
美咲さんは、どんなに酷い暴力を振るわれても
母親を憎むことができなかった。

虐待は怖いが母親とは離れたくない

美咲さんは、母親の虐待に薄々気づいていた
祖母から「何かあったら、これに電話するのよ」と、
119番と110番を繰り返し教えられていた。
「ここに電話したら助けてくれる人が来るから」と。
美咲さんは小学2年生のある日、母親の虐待から
逃げ回りながら、電話の子機を手に持ってボタンを押した。
すると、母親は美咲さんの髪の毛を引っ張った。

「誰に電話すんの! てめえぇ!」

逆上した母親はそう叫んだが、幸いにも電話は
かろうじて警察へ繋がり、最寄りの署員が慌てて
やってきた。
だが、これもいつものように母親は
「これはただの躾(しつけ)です!」と
強引に諭して署員も納得して帰ってしまう。
美咲さんも「大丈夫です」と言うしかなかった。

美咲さんは虐待から逃げ出したかったが、署員に
それを言うと保護施設に送られることを
知っていた。
保護施設に入ることは、母親から引き離される
という、さらに辛い結末を意味していた。
「虐待はイヤ」だが、「母親がイヤ」なわけではない。

そんな揺れる心理の狭間で、美咲さんは
日々引き裂かれる思いだった。

それでも、警察に電話をすれば、一時的にしろ
母親の暴力は収まる――。
それは極限状況における最後のライフライン
だったという。
警察への通報と署員の訪問は、
その後何度か繰り返された。

しかし、それを知った母親は、非情にも
電話の子機を子どもの手に届かない
冷蔵庫の上に置くようになった。
「あっ、もう届かない。誰にももう、
助けてもらえないんだ」

美咲さんは、それ以降、二度と自ら外部に
電話で助けを求めることはできなくなった。

「ばかやろー片耳返せ! 返せ!」

その後も、虐待を繰り返していた母親は、
アルコール依存症を患い、肝臓の病気が元で
美咲さんが中2のときに亡くなった。
連日のように暴力を振るった母親だったが、
目の前で冷たくなった姿を見ると、悲しくて
涙が止まらなかったという。
しかし、それでも冒頭のように叫んだのだ。

『ばかやろー片耳返せ! 返せ!』って、
亡くなった母親の耳を掴みながら、
泣き叫びました」

美咲さんは、虐待の日々を振り返って、
どう感じるのだろうか。

「あれだけの虐待を受けて、よく今まで生きてた
なあって思いますね。
改めて振り返ってみると、お母さんは弱い人
だったと思うんです。

そして、それを受け入れられずに、私を虐待して
いた。
でも、いくら自分が弱いからと言って、抵抗
できない子どもに手を出すのは絶対にしては
いけないこと。
私はそんな自分の弱さも受け入れられる人間に
なりたいと思っています」


子供と言うのは親に見捨てられることが如何に
深刻なことかお分かり頂けたでしょうか。
また此れは親子の血のつながりによる愛情でも
有るのですが母親の暴行は怖いでも母親が
好きなんです。
離れたくないのです。
だから施設送りになる通報は出来ないのです。
このジレンマ苦しいでしょうね。
こんな時、昔のように3世代家族だったら
母親の暴行も違ってくるでしょうし有ったとしても
助ける親族(祖父祖母)が近くに居ることは
違った結果を招くのでは無いでしょうか?
核家族の弊害を見るようで此れから先の
子供たちが心配になります。

美咲さんは力強くまっすぐに見つめてそう答えた。

後編では、新たな家族と出会い、新しい人生を歩み始めた美咲さんの姿を伝えたい。

【著者プロフィール】

菅野久美子(かんの・くみこ)

ノンフィクション・ライター。最新刊は、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)。著書に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)などがある。孤独死や特殊清掃の現場にスポットを当てた記事を『日刊SPA!』や『週刊実話ザ・タブー』などで執筆している。

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